Archive for January 2010

27 January

社労士会研修会

早朝より越前市議会の議会運営委員会の皆様が議会基本条例の視察にお越しになり、桑畠議員とともに対応させていただきました。一問一答方式はかなり前に導入され、議会報告会もすでに実施済みと所沢よりも先進的でいつものことながら、こちらの方が勉強になりました。

午後は都内に出て、参宮橋の国立オリンピック記念青少年総合センター(年末年始に派遣村が開設されたところ)にて、社労士会の研修に参加いたしました。テーマは、(1)改正育児介護休業法と(2)労働者派遣の現状と留意点について。育児介護休業の制度設計も以前と比較すると、パパ・ママ育休プラス等の特例、要件等の見直し、介護休暇の創設・・・と格段に複雑なものになりました。事業主が条文の趣旨を理解して就業規則等に落とし込み、従業員に対して周知するのはなかなか大変そうです。余談になりますが、前半の講師を務められた東京労働局の若い女性の指導官が意味のよく分からない質問にも淡々と対応されていて感心しました。

23:59:00 | oginoyasuo | |

06 January

「しがらみのない政治」の上を目指して(日刊新民報に寄稿)

 「しがらみのない政治」という言葉をしばしば耳にするようになってから久しい。昨年夏の総選挙においても、「しがらみのなさ」を売りに選挙を戦っている候補者を何人も見聞きした。そもそも「しがらみ」とは何なのであろうか。辞書で引いてみると、「引き留め、まとわりつくもの。じゃまをするもの。」とある。それでは「しがらみがない」ということは果たして素晴らしいことなのか。私も以前は「しがらみ」という言葉をマイナスのイメージでとらえ、「しがらみがある」ということは好ましくないものとして考えていた。しかしながら、元経済企画庁長官であり、細川内閣では首相特別補佐を務められた田中秀征氏のお話を聴いて、必ずしもそうとは言い切れないと思い至るようになった。

 田中氏が衆議院議員に初当選された当時、地元信州の養蚕組合の方々から「基準繭価を上げてほしい」という趣旨の陳情を受けられたところ、その後すぐ、陳情団の一人から「先ほどの陳情の件で、先生には動かないでいただきたい。陳情書を受け取っていただけただけでありがたいですから」という内容の電話があった。とっさのことで意味が分からなかった田中氏が確認すると、陳情団の中で「先生にはこんなわずらわしいことをさせたくない。それより国全体のことに取り組んでもらいたい」という話になったというのだ。さらに、その電話の主は「ご時世だから仕方ない。私どもは養蚕が国を担った時代があったという誇りだけで十分生きていけます」と付け加えたという。

 田中氏はそのエピソードを通じて、とかく地域エゴ、農家エゴで凝り固まっていると見られがちな地方や山村に、むしろ分をわきまえて自立心に富む、一段上の有権者が存在し、自身の自由な言動を許してくれたことを振り返りつつ、政治家としがらみの関係について次のように言及している。しがらみは政治家にとって一つの財産のようなもの。それによって、政治家の判断材料が豊富になるし、判断力も鍛えられる。特定の団体等の代弁者になりたくなければ、近づかなければよい。しかし、そうなるとさまざまな産業の実態を知らないで政策の判断をすることになる。

 日本国憲法第15条には「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と謳われている。もちろん私もこれに異論はない。議員立法による肝炎対策基本法の成立に尽力された福田衣里子衆議院議員などは、地域から選ばれた代表が我が国全体の国益を高めたという好例であり、まさに「全体の奉仕者」たる国会議員の仕事を果たしていると言えるのではないだろうか。昨年3月定例会において全会一致で制定された所沢市議会基本条例にも、第4条(議員の活動原則)の中で「議会の構成員として、個別的事案の解決だけでなく、市民全体の福祉の向上を目指すこと」が規定されているが、憲法15条とは若干ニュアンスが異なっている。この条文について、実はパブリックコメントの中で「個別的事案の解決だけでなく」よりも「一部の地域や団体の利害に捉われず」の方が文脈としては適当ではないかという意見もあったが、特別委員会での議論の末、素案のままになったという経緯がある。

 田中氏は、「しがらみや地元意識はいわば双刃の剣のようなもので、政治家にとってこれほど悩ましいものはない。だが、しがらみやある種の土着性は必要なものだ。顔の見えない浮動票に乗っていれば、確かに政治家の言動は自由になるが、言動が無責任になったり、めまぐるしく変転することにもなりかねない。」そして、「しがらみを持たない政治家より、それに縛られない政治家の方が一枚上である」とも語っている。

 その話を聴いて以来、私は「しがらみがないこと」を強調し、誰に支援されているのかよく分からない候補者には気をつけるようになった。「私にはしがらみがある。でも、それに縛られることは決してない。」そんなことをいう候補者は今まで見たことがないが、もし現れたら、ずっと信用できる。私も政治に携わる人間の端くれとして、しっかり顔の見える一段上の有権者の皆様と密接な関係を築いた上で、政策等の判断を行う際には信頼していただけるよう、「しがらみのなさ」を強調する議員よりも一枚上の存在を目指したいと思う。そのために、市民の皆様方にはより一層のご指導、ご鞭撻をお願いしたい。

23:59:00 | oginoyasuo | |